かけ声/服部 剛
 
雨の日に
道の向こうから歩いてくる
幼い娘と母親は

手を繋いだまま
せーのーせっ
の声あわせ
水溜りをひょいと跨(また)いでいった

わたしの日常も、密かな
せーのーせっ
の連続だ

自らをゆだね、飛ぶ
行為のあとで広がる余白に
わたしは、賭ける

ビニール傘を優しく叩く
雨唄(あまうた)の午後

足下の小さな水溜りに
目をやる、ひと時

せーのー
せっ





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