陽昇る時/王
背の高い男が岩の上に立っている
月明かりに照らされて
ただの棒っきれのように
男は口がきけなかった
なぜなら他に誰もいないから
この星に彼一人きり
花も咲かないこの星に
空気は濃厚だった
有り余るほど
全て男のものだった
ただ繰り返す呼吸
男は腕を水平に伸ばし
つま先立ちで目を閉じると
月明かりに影を作り
明日を迎えた
やがて
燃える玉がやってくる
それを見つめてはいけない
本能的に
男はわかっている
激しく燃え
また焼き尽くしてしまうんだ
明るくなる大地を眺める
いったい何を無くした?
いったい何を
男はそろそろと岩から降りると
暗いほうへと歩いてく
夜が明ける前に
裏っかわの岩山へ
夜から夜へ
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