よあけの瞼に/むぎのようこ
たゆたう
シャツのさこつを光があらう
とおくはにびいろの山々
つま先立ちのベランダいきのこった太陽
貯水槽にゆれる、あかい風船
サラダボウルのグレイプ
フルーツのにがみ
ひきつれたベッドの端
何時までもゆめが捲れたままだから
ひるひなか、瞼によるを飼うひと
くらやみは甘い
わずらわしいのは爪先ばかり
あとは仄あかるい掌をつなぐ星々
そこびく網の、孤独の、さらうような
仕草、
まるい大きなしろい月にねそべる群れ
およがない魚たち
いりくんだ道をえらべば
育ってしまった手足がはばんで
しずまった鱗が沙と舞う
ゆびを折ってかぞえては
祈っているひとの
しなやかな骨、魚のいのちが
にじむような朝は
おとした声でつまびらか
足元にひたひたとまた、よる
なみおとのする朝
サラダボウル
グレイプフルーツのにがみ
瞼に夜のおよぐひと
いつまでも捲れたままのゆめ
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