交差点/伊藤 大樹
 
隣人は透明な猫として現れる

薄明の線路の上を
囁きながら 死者を乗せて
一本の列車が発車する

台風がそこまで迫っていても
わたしたちの窓は 安全だ
有刺鉄線に蔽われた東京の空を
思いがけなく白い雲が縦断する

青信号の歩道をわたった六月の鳥が
河川敷の花壇で卵を抱く季節
煙草の火もくすぶりがちになる午后
通りをうるおしていく風がまなざす

死者は
わたしたちのすきまを
すれちがっている他者であったりする

 「死者も渇き
 「死者も汗かいている

詩は言葉たちの行きかう交差点である
若者のつややかな?に
毅然とした女の秋波 ひらめけば
銀河のはじまり 歴史の終焉
瞬間 宇宙大の未生をはらんでいる

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