病い/伊藤 大樹
泥酔するまで
溺れた
お前は やさしいから
一挙一動
こわしたくなる
時計の針だけ
自由に思える
隣ですこやかに
寝息を立てるお前の
横顔が遠くて
とてもさわれない
自分のいのちの重さと
等価交換する
いつもお前の愛の重さと
釣り合わない
(わたしの秤はいつだってふりきれてしまう)
苛立っているのは
自分の未熟のせい
言葉なく
すりよってくる猫を
撫でつつ
平静を装っても
肥大化した希望が
しつこく 自分を慰めてくる
体を重ねた夜の
やわらかいシーツと
強ばったお前の体と
いつまでも消えない劣等感
スプリングのイカれた
ソファにねそべり
目覚めて
泣きたくなる
そんなにも
お前はやさしい
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