wonder boyA/opus
 
りだ
(彼の顔が坊やに)

坊やは右手を空に向け
こう叫ぶ
「母ちゃんは泣いていた、
父ちゃんはそれでも強く生きたのだと」
彼の右手が運転手の股間に食い込む

「すみません??」

そう父親が謝るが
運転手はこう言うだけだ
「嘘だとしても見上げた坊やだ。
俺のような倍もありそうなタッパの男に
拳をあげるとは??」
彼の膝は小刻みに震え続ける

坊やは父親に頭を殴られて
そこをさすっている
その口元には笑みが浮かんでいる

夏の陽光が首筋に刺さる
アイスコーヒーの苦味
明滅する照明

トラックの彼は昨年に離婚し、
坊やの母親は一昨日、万引きで捕まった

あぁ、それにしても
冷房がきつすぎる
目を瞑ると
彼の笑みが脳裏に浮かんだ



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