誕生 3.11に寄せて /前田ふむふむ
離別すること
それははじまりである
丸い空が
しわがれ声をあげて
許しを乞う
そのとなりで
友はしずかに
そして
激しく雨になる
空がにわかに
なまりを
たくわえてくれば
きみの来歴は
砕かれた壁の
内部に
雨とともに
刻まれるだろう
朝焼けのとき
こわれた水面を
きみを
称える
いくえの書物が埋めている
その紙のうえを
船が出港する
広がる波跡に
ひとはあつまり
ひとは散り
やがて
すこしずつ 足の先から
道ができ
新しい顔をもった
きみは生まれるだろう
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