眠りとは/坂本瞳子
 
眠りたいという欲望が果てることはない
永遠の眠りは恐怖の対象でしかないのに
人間である限りこの矛盾は続く
生まれたばかりの赤子と
微々たる生命の灯火を伴う老人とは
背中合わせであることに
君は気づいているだろうか
そんなことを知っていようとも
為す術はなにもない
だから知らなくていいということではない
尊い生命をどうこうとか
そんな話をしているのでもない
束の間でもいい
忘れられるだろうか
一生のうちどれくらいならば眠らずにいられるのだろうか
何日間ならば続けて眠らずにいられるだろう
そんなことを知ったところでなんになるのだろうか
眠りたいという欲求は増すかもしれない
ただそれだけのことだろう
戻る   Point(0)