青春の小道(小詩集)/宣井龍人
った
だが、人は、風が、オズオズ、と寄ってきて
春ですよ、と言って、ヒュー、と逃げていく
これが春だ、と言って
得体の知れない、球の上に住んでいる
【空間の叫び】
空間の叫びを分解した
きしむ水車の声がする
消化された食物の声がする
汚れた水の声がする
倒した森の声がする
さまよう価値の声がする
街の雑踏の声がする
冷たい視線の声がする
眠りを妨げた土の声がする
霞んだ空の声がする
太古の生活の声がする
生物の争いの声がする
それらは
歴史の扉から飛び出した
もはや大地には存在しない
【少女】
僕は貴女とはじめて出会った
限りなく痛々しい傷心の丘で
青々と繁った草原のベッド
悲しみと不安そして悟りの日々
もう僕の瞼に住みついたのだろうか
できたら震えた心を優しく閉じてほしい
潤んだ瞳に歓びをあげよう
貴女の言葉となり湧きだしたもの
名もない泉の清らかさにも似て
愛を求めて野原に彷徨う蝶のよう
悲しみを知った花弁のみが知る真実だ
貴女の瞳に静かに宿る安らぎよ
次は何をを教えてくれるのだろう
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