サーカス/ヒヤシンス
サーカスが去って行く。
ネルソン坊やが月に向かって口笛を吹く。
ジェームズ夫妻は互いを罵り合う事で生への愉悦を感じている。
駄馬が一頭、自分の運命も気にせずに草を食んでいる。
口髭の座長が鞭を鳴らして唾を吐く。
道端の古びた男のラジカセからトム・ウェイツが流れている。
誰かの吐いた煙草の煙に夜空が白く光っている。
バラードの似合わない夜だった。
エリックはお人好しだ。
サムスンはお調子者だ。
イカルガは自分の故郷を持たない。
今夜のショーは終わったのだ。
不思議な晩にギターは嘶き、いつしか月は赤く染まっている。
サーカスが去って行くのだ。
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