声一つとして・・・/為平 澪
 

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ぼくは河原にうずくまり
手をあげられなかったから 足を斬られた
声一つ、あげることすらできなかった
ぼくの喉は声が出せないように釘が刺されていた
母が賢く生きてねって、ぼくの喉に釘をさした
(母さん大好きだよ、この国に産んでくれてありがとうって
(どうして伝えたらいい?
言葉を求めれば求めるほど喉から血があふれて声にならないまま
声一つで、兄妹すらも違う国
          ※
黒い死体は白い炎に焼かれて黄色いビジョンに映し出された
(ねえ、国家って、五体満足じゃないと、
(頭が人並み、という範囲じゃないと、
(声一つとして、あげられないの?
異国でもう一人のぼくが後姿しか見せない母に問いかける
白が似合う美しい母は金の髪を揺らして振り返り
青いまなざしを向けて赤い口角をあげると
アイスピックでぼくの喉を 今日も突き刺す

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