浮上するサイレン/霜天
あたたかい あさ
濡れた地図の上に書き込んだ名前は
滲むように、消えた
始まれない私は
いまだにまるい船の上です
警笛は
遠い雲のこと
進まずに消えるのは
あの空へ
破れかけの地図を
後部座席に貼り付けて
静かなアクセルを、踏み込む
二つに分かれた景色の中で
いつまでもこの足
引きずっているものは
たったひとつの
足首を洗えば軽くなる少しだけ
そのくらいの
踏み込んだ
景色は遠く
白と黒とに
嗅ぎ分ける音
浮上するサイレンのようなどこかから
私の、私たちの、耳をふさいだその奥から
湧き上がる回答は、
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