basement/opus
 
黒猫の目玉の中に白い顔が写る
赤い唇が漂う
それが写真の中の全てで
僕はソファに寝そべっているのだが
何だかそわそわしてしまう

強い陽光に子供達の日焼けが生える
ビニールの水泳バッグと塩素の香り
言葉に意味はないのだが
その響きは空気の振動を変える
がたがたと進むバスの中
うつらうつらと笑みを浮かべながら
老婦人が身体を漕ぐ

何が基準で、何が良いのか
そんなの人それぞれ
でも、国による文化や気候、言葉などで
ある程度は似通ってくる
聞く曲や読む物語、人生の経験などでも変わってくる
遺伝子の囀り
文学の色合い
虹色のコミュニーション

「ねぇ。」
話しかけられてそちらを向く
「タバコ持ってない?」
持ってない、そう答える。
「そう。」
つまらなそうに後を去る
彼女とはそれっきりさ。
戻る   Point(2)