きずとしょくもつ。/木築
 
いに敏感になった他人は、ひとを避けるでしょう。

血に濡れた被害者は「だれもたすけてくれないのに」となげいて、腹をかかえる。嘔吐のできない腐敗物が、ごぼごぼと音を立てている。
吐瀉物が肥料に、その土地を肥やしていても、腐敗したなにかはただ異臭をはなって、ああ、いっそ腹でもさいてしまえばいいが、と思われながら、ひとは後生大事に、いたいつらい、そんなことをいいながら、腹をかかえて苦しんでいる。腐った場所に種があるなら、根ばかりはこびって臓腑に絡みつき、ぎちぎち、ぎちぎちと音を立てるばかりで、ぎちぎちぎちぎち、そんな音ばかりひっそり明るく響いている。

ぎちぎち。
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