時鳥/るるりら
言っている
夕方の花の水遣り。ホースの先で 虹が現れたことが「げいじゅつてき」
蕗の葉のやわらかいところだけを虫が食べ跡は うつくしいレース模様なのが、
げいじゅつてき げいじゅつてきだね げいじゅつてきだね ほら あなたにも聞こえるでしょ
ある七時
すこし日が影に あしもとに差し込む光 しずかに うまれるながい影
鳥のように生きることを夢想する 飛沫を思わせるような囀りで愛を語るのだ
囀りに きがつかずとも さりげない思い遣りのような言葉が しじまを彩る
ある八時
そして ある九時
あるいは十時
ホトトギスが鳴いている
少女は いつしか絹をまといピアノフォルテの音楽の中で 大人となり
クロスする時計のことを忘れていても ホトトギスは歌い続けている
ある十一時
瞼をとじれば どんな生き物とも心を通わすことができる
なにものでもない自分に もどるための歌を ホトトギスが聴かせてくれている
ある十二時
一組の恋人同士が 同じ夢をみた。
ふたりが 翼の両翼ように羽ばたいたとき ぷっくりとあたらしい命が芽生えていた
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