踊りを踊るには/春日線香
 
踊りを踊るには
こうするんだよ
といって
知らない男が窓から入ってくる
ひょろ長い腕が床にまで垂れ下がって
体がやけに白くすべっこい
黒い薄衣のようなものを羽織っていて
その下はまったくの素裸である
わたしはもうずっと縛られているので
生ぬるい床に片頬をつけて
男を眺めるともなく眺めるしかない
踊りを踊るには
こうするんだよ
といって
知らない男が奇妙な足取りで
部屋の四隅を行き来しては
甲高い声で歌っている
その歌をよくよく聴けば
はるか以前に滅びた国の
狐と老人の物語であるらしいが
あるいはそれはまったくの間違いで
ありきたりの田植え歌なのかもしれない
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