戦争/田中修子
 
ぜんぶ 灰になって
狼や鹿や
花や葉っぱや
みずくさやお魚や
そんなのだけ残ればいいのにな
そうしたらきっと きれいだろうな

戦争が起こったなら 焼夷弾が真っ赤におちてきたら
燃え尽きていく家のなかで おかあさんとおとうさんは
わたしを抱きしめてくれるかもしれない

 いま 少し年をとって
 公園で遊んでいるこどもたちが いつか
 人を殺したり 殺されたりされるかもしれないことを思うと
 それは 戦争は ないほうがいいに決まっているけれど
 もしおとなたちが
 こどもたちの心の中で起きている
 荒れ果てたかなしみに気付かないのなら
 たぶん そこからもう 戦争ははじまっています
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