首吊りの森/田中修子
森になった。
私には、いまや、健康な肉体も、なめらかにしゃべることのできる舌もある。あるように、なってしまった。
私のいまのこの体こそが、この美しい死の森を出なければならないという合図だろう、そうなのだろう、私に立ち止まることはいつだって許されることはなかった。
「いっしょに、行こうよ」
心臓がバクンとした。鼻か口から入った花の種が血を巡って心臓に宿ったのが分かった。痛む心臓を喜びかかえて私は歩きだす。
この花が私の心臓をひらいて咲くときが、眠りだ。やがて芽吹きの季節が私の上に舞うだろう、そのとき咲いた花とともに見る風景は、いったいどんなものなのだろう。
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