首吊りの森/田中修子
なにがいいんですか。自殺ではなかったことがですか。すべてを黙ったまま、自然死してくれて、それは、それは、完全な殺人ではないですか)
「よがっだ、っで、だにが、よがっだ、の!!」
叫んでいた。赤黒い塊が喉から出た。結ばれていた舌がほどけた。
落ちてきた人はいっしゅん内臓や骨を晒したあと、いく群れもの白い花になった。首を吊ってとまどうように揺れていた別の人々も、熟した実がぽとりと落ちるように、地面に落ちて首吊りの森のあらゆるところを覆い咲く花になった。うすぐらかった高い木々の皮はつややかな緑の苔に覆われ泣きそうに眩しく、苔からはまた燐光のように、小さな花が咲き、しげる葉の向こうに、澄
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)