首吊りの森/田中修子
 
う合図だろう、そうなのだろう、青い蝶、私に立ち止まることは許されないのだろう。

 グチャリ、といやな音がして、目の前にもう人ではない人が落ちてきた。
 腐ったにおいにまさっていいかおりがした。甘い、バニラの、ばらの、はっかの、海の匂いのする。

 あの子が亡くなる数日前にあげた、誕生日プレゼントの入浴剤のセットのにおいだった。けっこう高かった。ほんとうは自分が使いたかった。それでもあの子にあげたかった。
 ネットで知り合った子で、手紙や携帯電話のやりとりは何度もした。
 「私、砂漠で走ってるみたいなの。いっしょうけんめい走っても絶対に転んで大怪我をして、どこからきてどこへむかってい
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