喚き散らす肉/ただのみきや
なにもない
わたしのなかには
わたしがいるだけ
気だるげな猫のように
死後硬直は始まっている
小さな火種が迷い込むと
すぐに燻り 発火し 燃え上って
肉の焼ける匂い
骨が爆ぜる――生枝のそれのように乾いた笑い
見てごらんわたし
どんなに焼焦げても崩れない死体を
他人ならではの憐憫の眼差しで
地図にない湿地帯の
奥の奥
ふたりで骨になろう
絡み合った一対の白骨に
自殺なんかじゃない
心中とは言わせない
互いの自己実現と
常軌を逸した恋情のため
ふたり共食いして
――残像だ
若き日に乖離したものが
いま目の前に揺らめいて
手を伸
[次のページ]
戻る 編 削 Point(13)