私だけが見た、私だけが夢見た色彩/北街かな
 

後頭部から痛みが走り 眼窩に向かってひといきに直射日光が刺し込まれてきて
あたしは目から星を吐き出しながら答案をかき集めて下絵を拾って、ああ! と感嘆の台詞を言って抱きしめた
紙がひとりでにびりびりに破けていく
線でたどっても何度形にしても、色を試しても塗りなおしても、すこしだって残らなかった
地球の端まで引き攣れて、かすれて、なんど直しても、ほんの少しも跡を残せない
なにかの色のついた足跡がまたしろい泡に食われて、ぽそぱすと消えていくから
歩き疲れすぎていたあたしも、食われた

なにもおかしくもなく疑問すらないんだ
叶えられないことも到達できない試みのすべて
あたりまえの脱落が駅のホームから繰り返されて環状になり
頭上の気温がすべてを支配しどんな色もまっしろに消し飛ばして
あたしの意志と関係がなくずっと削除している
無に向かって
感情とか理想論とか、複雑な譜面の形状とか、確信の相関関係だとか
せめてどんな色だったかだけでも漠然とは覚えて居たかったんだ
二度と、抱きしめられない
無残な
あの瞬間の私だけの
私だけが見ていた
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