逸話/虹村 凌
老いぼれた犬たちや
枯れた枝たちが
誰もが待ち望んでいるのだと
かつて見た夢を
ずるずる引きずって歩き回る
違うとも言えずに
階段を歩き続ける
老犬や枯枝たちの夢は生乾きのままだ
外に見える景色の輪郭は曖昧なままだ
形を持たないぼんやりとしたふねを
実感の無いまま何となく暇つぶしに動かし続ける
青い日々が終わり赤い日々が始まろうとしている
入り口
波打ち際
緑色のもろもろとした匂いを
焦げ臭い雨が押し返して行く
僕たちは穏やかな波に身を投げて
ゆっくりとただよえば良いのかも知れない
あぶらの様に浮かんで
ぼんやりとした鈍い光をかえしながら
ずっと空をながめている
そういうことなんだろう
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