ある錬金術師の告白/ただのみきや
む
今日もそれは富む者と共にある
貧民が朝早くから夜遅くまで働いても
その一かけらにも達しはしない
世界中の通貨や株価が激変しても
黄金は緩やかな波のように寄せては引くばかり
普遍の輝き 地位と力と富 勝者の象徴
わたしは黄金を生みはしない
価値なきものに一瞬息を吹き込んで
あたかも 黄金と見紛うような
――夢幻の輝き
朝には その手の中 淡く解け去って
持てる者には手酷い欺きを
持てない者にはひと時の夢を
わたしは黄金が憎い
故に敵対し挑み続けている
それがわたしの錬金術
日の当たらぬ部屋に籠って明けも暮れても
――すべてはガスに 残されるのは
黒い焦げ痕ばかり 伝える口を持たない
精霊たちのダイイング・メッセージ
《ある錬金術師の告白:2017年5月4日》
戻る 編 削 Point(9)