ある錬金術師の告白/ただのみきや
――黄金が憎いのだ
魅入られ 争い奪い合う 不動の価値が
金の卵を生む鶏は腹を裂かれて殺された
その輝きが飼い主を愚かにした
鳥でも蛇でもおよそ卵には天性の美のフォルムがある
それは新たな命を未来へ送り出す小舟 古から
黄金の輝きは 美に 命(他者の)に 勝るもの
わたしは黄金を憎む
人間だけが容易く欺かれるその輝きを
それが石や砂のようなら誰が尊ぶだろう
純化された黄金は透き通ったガラスのよう
澄んでいるのか映しているのか戸惑うほど だが
もし希少でないのなら 誰が奪い 誰が殺してまで
血の通わない鉱物のため 身を粉にしてまで誰が
わたしは黄金を憎む
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