五月はジャムを煮る/
そらの珊瑚
熟れた苺は
三温糖の甘さで身をもちくずし
林檎は
シナモンの香リを身にまとわせながら
北国の樹を忘れてゆくだろう
ずっと果実でいたいという純心は
換気扇のはねに吸われて
煮詰まってゆく鍋のなかで
今という時間も煮詰まる
ささやかな日常こそが
確かなことであるようで
そんな刹那をわたしも
いつか忘れてゆくだろう
供物は ついばんでしまえばおしまい
からの硝子瓶がこの手に残るだけ
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