帰る(五月雨降られ)4/AB(なかほど)
おとなの字じゃないから
と口をとがらせたとき
ルーズリーフに
野花が咲いたのかと思った
息づかいのリズムで
少しだけゆれる髪と
同じようにさらさらと走るペン
の後に花が咲いたのかと
あの日から
探しているつもりはなかったのに
土手を歩く僕の足元から
上流に向かって咲き始めた君の花が
視線を霧島に向けさせ
その川の「流れける」が
やっぱり国文研に行かなきゃ
と言った君の探していたものを
ようやく思い出させた
靴を履いているうちにぽつぽつと降られて
ああもうっ て言った君の
探していたものは
ここにあるんじゃないのか
日向の山々に降る雨が
百年かけて大淀川に
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