神様の時間/青井
 
夕餉のおかずの買い出しに
老犬を引っぱるように散歩へ出て
明日の予定に思いを馳せるともなく馳せながら
路傍に伸びる植木の影に目をやってふと
いま自分が神様の時間の中にいることに気付く

神は遍在する
黄昏に広がる薄闇のように
それは遠く霞む空に宿り
木々をそよがす風に宿り
犬の鼻先に漂う焼き鮭の香りに宿る

町角に降る五時の鐘の音に宿り
打ち捨てられた自転車を包む錆びに宿り
ふいに立ち止まり途方に暮れた足先に宿る
本当は何もかも満たされているのだ
神という名の空白に

美しい音楽の調べにも
雲間から差した陽の光にも
神の気配は満ち満ちている
すべてが神の賜
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