彼方少年/塔野夏子
 
彼方少年はいつも彼方を駆けている

街の彼方を
丘の彼方を
地平の彼方を
世界の彼方を

彼方 という成分が
分離しようもなく組み込まれてしまっている

だから
たとえば
自らと向き合うときも
自らの彼方を駆けてしまう

誰かと接吻するときも
接吻の彼方を駆けてしまう




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