忘/霜天
 
久しぶりな人が
久しぶりな人と
変わらない駅前について
言葉を行き違わせている
懐かしいことを
懐かしいわねと
ちぐはぐな空模様で
どこまでも笑っている


継ぎ接ぎの服は、いつもより暖かい
その縫い目、こころの繋がっていける
場所
雨上がりの静けさ
霞の言葉、そのどこかで
懐かしい人が
懐かしいねと

少しかすれた声で


駅前の鳥が
鳩が
先導しているレールを
乗り遅れた電車は、目の前でドアが閉まって
切符を噛み千切る
口に広がるものを
僕はどこかで知っているかもしれない

どこか
どこか
どこか
遠くの、遠くの
ちぐはぐな空模様で、僕は
笑うしか
ない


久しぶりな人が
久しぶりな人と
すれ違うように、混ざり合っている
笑い合う声の
大事なところを
今は多分
誰も知らない
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