枳殻の花/
伊藤 大樹
シンクの窓から
光が生まれている
質量はないが
手触りは淫靡だ
わたしたちは渇きやすいから
眠りの岸辺に
傷だらけの素肌をさらす
思い出せない言葉に囲まれ
猫の亡霊を見た──まひる
スタッカートする点滴を見つめ
やさしさの舟を編んだ
心の停車駅に
誰も乗っていない列車がやってくる
飲みさしの牛乳
と ほのかにくすぶる煙草
庭に枳殻の花が白い
戻る
編
削
Point
(7)