月の町 お題、即興ゴルゴンダ(仮)より/田中修子
《きっとあなたをそちらで愛してくれるだれかが見つかるでしょう》《からだがあつくて不眠なのなら薄荷の葉をすこし浮かべたお風呂にはいりなさい》《おとうさんとおかあさんのことはもう他人だと思いなさい、ふれるたび燃えるのはあなたです》
などとこたえて、ほんとうの少女たちが月の町におちることをとめている。
それゆえ月の町の彼女たちは、ほかの町の住人のおとなたちに貴重とされた、矛盾の存在だ。
息のしづらい外の世界のほんとうの少女たちにとって、うわさにきく月の町は静寂と平和に満ちたあこがれの世界だ。たしかに一見まぼろしのように美しい町だ。無遠慮な男編集者によって、ときおり少女雑誌や少女小説に、少女
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