逢えたらいいな/花形新次
それは
中学二年の夏
休み時間に
きみがクラスの男子相手に
「昨日、××君の夢を見たの」と
僕に聞こえるように話したのを
聞いたとき
僕はずっと
そのずっと前から
きみの涼しげな睫毛に
横顔に
生まれて初めて
美しいもの
自分よりも大切なものを
見つけた
しかし、
僕が触れるには
きみはあまりに繊細で
透き通るようで
壊れそうで
遠巻きに眺めている方が
僕にはお似合いだと思ったんだ
そんなきみが
ひょっとしたら
僕を、まさか
心残りがあるとすれば
「別に・・・違う」
そう言われても構わないから
きみに告げておけば良かったな
きみの為になら僕は死ねるんだよ
今逢えたとしても
やはり何も言えないだろうけれど
生きているうちは無理だろうけれど
死んだ後でも
逢えたならいいな
そう思っても良いだろう?
もうそんなに長くはないんだから
ねえ、おヨネさん
ええ、又左衛門さん
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