誰もいない/末松 努
残して
帰社する記者たち
ところが待ち受けていたのは
誰もいないことを理由とする拒絶だった
マスなコミュニケーションは
いま勝利して喜ぶのは誰だという発想を守り
敗北宣言する
誰もいない
変わるものが誰もいない
代わるものが誰もいない
ほんとうか
そう問う声に
答えるものも
応えるものも
誰もいない
人工甘味料が
三角屋根のお菓子の家から
地中深き蟻の巣へ次々と運ばれ
水脈はいま
コーラとなり
そして
地上に吸い上げられては
飲み干されようとしている
誰もいなくなる前に
歯が溶けていないか
鏡を見て
都市伝説を
確かめてみよ
身体の錆びつきは
簡単には
見えないもの
だから
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