へび坂/田中修子
 
つも友だちがいて、この黄色い滑り台をみんなですべる。滑り台を、よごしてしまった、いけないことだ。
ふっと気付く。
友だちのお母さんは黒い髪なのに、隣にいる祖母は、灰色だ。
やさしく背を撫でられているのを、誰にも見られたくなかった。
「もうへいきや、手ぇはなして」
祖母は私をしずかに手放した。

帰りのへび坂は夕暮れで、あんなにすべてだった祖母が、いっぺんにちいさくなった。祖母が私を引いてくだった坂を、私が祖母の手を引いてのぼる。急にいじわるに暮れてゆく空、「足が動かないけぇベビーカーにスーパーの買い物袋入れとるから、近所の人にきちがいと呼ばれとる」うわさ話をする木々。

あのとき
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