見なれた顔 ★/atsuchan69
刎ねられた首の、落武者ヘアーの見慣れた顔がそこに在った。
所々に空いた障子の破れから庭の繁みを覗かせた薄暗い茅屋の畳のうえに
斑に変性菌類の付着した身体のない見慣れた鼠色の顔は飄々とした面持ちでごろりと転がっていた
女、子供らはその顔の間近へ卓袱台やら座布団だのを運んだが、
それは失われた日常を取り戻す儀式のためだけでなく実際に朝食の準備も兼ねていた
顔のない母親はひとりアルミの鍋や茶碗を運び、
小鉢の炭と皿に盛った千切った新聞紙を盆にのせて運び、
さいごに白木の飯櫃を運ぶと姿の消えかけている子供らを卓袱台のまわりに座らせた
父さんはいつまでもあんなだけど、おまんまがこうして食べる
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