いにしえの夜の復権‐‐蜂飼耳『顔をあらう水』/kikikirin75
。われわれは文字通り「テレビを消す」ことから始めるべきだろうか。
この詩集は、そんな太古の暗闇に想いを馳せている。もちろんそれは、安直な非・文明、いわゆる「野蛮」や「古代」への賞賛とはまた違ったやり方だ。われわれが切り取ってきた夜の領分を、月を、星を、闇を、静寂を、そして死者を、そのまま夜にお返しするという礼節を詩人はわきまえている。
檻のなかにいるものがなぜそんな/楽になっているのかわからない/いつか発明したつもりの火/なじんだ闇をすっかり枯らして/あかるくつかれているたぶん/大気圏のそとには宇宙ステーション/地下はあたまがいたくなるほど深く掘られて/ヒトはいよいよ忙しい/ねむるための闇
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