/紅月
ある冬の朝、飼っていた鸚哥が死んだ。
ちいさな黄色の、頬がほのかにあかい鸚哥。どのように出会ったのか思いだせない、な
ぜ、いつからここにいるのかさえわからない、物心ついたときには当たり前のように鸚哥
はわたしの部屋にいて、交差の痕だけがあおくまばらに散らばる家の、閉ざされた部屋の
なかにわたしたちだけがいつもふたりだった。この部屋から出たことのないわたしは文字
の読み書きすら知らず、鸚哥に言葉を教えることなんてできなかったけれど、鸚哥ははじ
めからおおくのみずみずしい言葉を知っていたから、わたしはぎゃくに鸚哥からたくさん
の言葉をおそわって、こうして文字を読み、書けるよう
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