春と詩はよく似た病と嘯いて/ただのみきや
 

突き出している慈母の胸へ
旅する覆面の魂かもしれない
魂など持たないただの覆面かもしれない


渦巻く朧な夜に唇を近づけ
すーっと湯気を吸いこんで
最初から幽霊だったことばにならない火が
火傷のような時を剥がし続けた
乾かない無感覚の痛みがひどく書かせる
驚くような崩落が逢引だ
気恥ずかしく甘く腹を切らせ――
金魚になっておまえとひらひら天地無用に緋色





        《春と詩はよく似た病と嘯いて:2017年4月8日》










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