曲り下る路のむこう/ただのみきや
 
―その思いの方が強かった
速度を緩めずに走り去る 引き返すこともふり返ることも御法度
走り続けるのだ 時間と距離を引き離すことだけが残された全て
目的地は最初から無く辿り着く場所すら見当もつかない

いつのまにか舗装は途切れ幅の狭い山路へと変わり
――日は没して 街灯もなく そう車のライトも点かないのだ
闇に切りつけるような鳥の叫びガタガタ車は揺れ
計器類もすべて瞑ってなにかに飲み込まれたように
冷たい汗が吹き出した身体は強張り額をハンドルに押し当てながら
指は固まり木偶になってもう放れないこの後すぐに訪れる衝撃に
全神経が聳って夢なら覚めるだろう夢ならだけど現実ならどうなる
覚め/ルト/現/実か/ラ/ど/うナる/ドう/なル/ど/ウ……}
 

なだらかな丘を曲り下る路のむこうは見えない




             《曲がり下る路のむこう:2017年4月5日》









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