曲り下る路のむこう/ただのみきや
 
なだらかな丘を曲がり下る路のむこうは見えない


 {引用=突き当たり 川沿いのT字路を左折する
右手には野菜や果物を売る民家が二つ三つ軒を連ね
白壁が所々すこし剥げたカフェらしき店が一軒あった
端(はずれ)の納屋には古い鉄看板――金鳥と大塚製薬そして
黒地に黄色い文字で記した聖書の言葉が貼られている
路の左側に歩道はなく路肩には芝草と所々丈のある雑草が
そよいでいて路より高く見えるがそれもすぐ傾斜して
そのまま雑木林へと続いている

数十分走ると右の路沿いに地蔵が立てられていた
四時過ぎの日差しが地蔵の赤い前掛けを生々しく照らし
眼裏から脳裏まで乾かないインクで
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