待ちわびて/ただのみきや
数の蛇のよう
目を瞑り太陽に欹てるメドゥ―サの嘆息
先端は幼子の指のように柔らかく反りながら天に触れ
風が奏でる弦へと生まれ変わる
淡雪のレースは見る間に透き通って
濡れた木肌を微かな湯気が白く這い上がる
この季節 この日 この朝のひと時
わたしは見て 見つめられ 互いに捉え合った
出会いは再現できないカイロス
ひとつの星の破裂のように
造形だけが残された術
夢と現実が互いを鏡に見るように
黒々とした木の肩に鴉の糞が白い花びら――
*群衆の中にすうっと浮かび出た顔、
言葉の中で時間は伸縮する
《待ちわびて:2017年4月1日》
*エズラ・パウンドの詩「地下鉄の駅で」の前行。
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