記憶の焼土/
伊藤 大樹
記憶の焼土に
茫漠とひろがっている
透明を佇む石が
ひととき凪いでいる
点滅にさそわれて
浜まで来ると
むせ返るほどの潮の匂いが
過去を引き連れて
私を攫った
夏が焼けつく部屋に
窓は開け放たれ
頬を打つ清涼な風と
波打つ 真白いカーテン
テーブルの上のくすぶっている煙草
思い出の雨に打たれて
出さない手紙が流れつく岸辺に
透明な私の足跡だけが残る
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