こぼれ ひらく/木立 悟
 






夜は融けて立ち昇り
路と壁の亀裂を埋める
通りに捨てられたものに触れ
無機を有機に変えてゆく


階段 廊下
屋根にあふれ
器の水は
空の光にそそがれる


はざまのはざまに在りながら
地は地のままに遠去かる
流れ流れる 夜の結露
息つぎに満ち 笑みに満ち


思い出のなかの縦線
街を咬んだままの光
どこからかちぎれ 飛ばされて
枝のなかに翻る旗


けだものよ わたしは
光を数えられない
突き刺さるみなもとを
ただ愚かに見つめ返す


手のかけらの集まりの手が
夕暮れに向かいひらかれて
煙る夜を拾いながら
夜となって消えてゆく



















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