セパレータ/紅月
それは私の知らない言語だった
切り裂かれた肉片や野菜
たくさんの不揃いな訃報が投げこまれ
撹拌されていくつくりものの箱の中で
なにひとつ交差しないという暴力
そうして神様は
水没した世界をごみ箱に捨てた
かつていきものだったものが
箱の中に散乱してつめたくなっていくのは
とても叙情的でうつくしいこと
なのかもしれなかった
(それだけしかないから)
西日が差す教室
窓の外の景色はすべてモノクロで
なにかに喩えてやりすごすのはとてもむずかしい
ごみ箱の蓋をそっと閉めると
ちょうど下校時間を告げる鐘が鳴り
校庭では顔のない人形たちが
命がけの銃撃戦を繰りひろげているのが見えた
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