春/
AB(なかほど)
白木蓮の花が
まだ冷たい空に向かって
ふくらんで
忘れていたつもりの
いくつものことが
いくつもの夢が
何人ものひとたちが
咲いてきそうで
立ち止まっている
と
こころがにじんで
ぼやけていってしまう
何人ものなかの
たった一人の君の声が
君の顔が
その息づかいが
浮かんでくる前に
いつもの生活に踏み出さなければ
線路わきの菜の花まで
早足で
桜
咲くな
まだ
散るな
桜
咲くな
まだ
散るな
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