graduate/青の群れ
 
貰った花束をスマートフォンで切り取ったり
取れてしまったボタンを小さな箱にしまいこんだりすること

連なっているはずの港区の海の匂いは
知っている海と少しだけ違うような気がした
平坦につづくはずの、また別の生活への入り口
見慣れた景色から抜け出す電車に乗って

いつのまにか慣れてしまう新しい家の壁紙の匂い
眩しい部屋に生活用品の影ができていくこと
はじまりは意外なほどにあっけなく過ぎるけれど
小さな糸くずを拾い上げて愛おしむことはしない

古い呪いから抜け出して
少しだけ質量が減った自分の身体に新しい糸を巻きつける
地面と肉体を繋ぐ糸
これは永遠の別れではないから
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