phosphorescence/紅月
 
た鳥たちの骸を抱えて黄みがかった現像液のなかへ溶ける。


そうして、かたどりだけがのこされた、
かたられるはかたるのかたちからはぐれ、ここにはなきがらばかり、





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延びあがった影はやがて斥力に耐えかねて湾曲する。かさなりを拒む乳房のみずみずしい弾性。彼女のしろい乳はどこまでもたかく噴きあがり、なぐりつけるようなはげしい驟雨となって街を濡らす。山々の稜線をしろくなまあたたかい川がくだり、まるで彼女の髪のようにしなやかなながれを汲みあげては、いにしえから雨乞いをつづけていた人々はめいめいのながい乾きを癒していく。そうして、街はいちめん白に染まり、うるおいにひとみを焼かれた人々の眼孔からは次々と煤けた詩句がこぼれおちる。軽い挨拶を交わすたびに、ひとみをうしなった彼らはひとりずつ白の溟い渦のなかへ飛びこんでいくだろう。干からびて使い物にならなくなった文法だけが、ただそこに遺されて、降りそそぐ線の集合のふたしかさを距離に喩えつづけていた。



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