愛煙家/ただのみきや
 
こみ上げる想いに潤むひとみのように
雪はこらえにこらえて雪のまま
朝いっぱいに流れ着いた三月のある日


外に置かれた灰皿の傍 四人の男が並び
みな壁を背にして煙草を吸っている
見知らぬ者同士あるいは 
同じ時間に同じ場所と見知ってはいるのか
互いに目を合わすこともなく
駐車場の方を向き
風の港へ白いけむりを送り出す
けむりは抱かれて行ってしまう
すぐに見えなくなって


四人の男たちは一人きり
ほんの数分 乳房を吸う
ニコチンにあやされながら
雲のように流れる思考の影を
ぼんやり見送ったり
ふと つかまえたり
そうして灰皿に煙草を押し当てて捨て
儀式
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