よるのとり/そらの珊瑚
よるになると
ぴい、と音が鳴る
この部屋のどこからか
耳を澄ませる
出どころを
さがしあてようと
眼をつむり
耳だけになってみる
飼ったはずはない
けれどそれは
とりのこえに似ている
逃がしてしまった青いとりのこえに似ている
あのうぐいす笛にも似ている
浅い春
熱海の梅園で買った
竹で出来たその笛を
幼い子が鳴らしている
ぴい、とさえずる
青すぎる青色の空にむかって
思い出になってなお
その笛の音(ね)は健やかに
病むこともなく
生きて
いる
これからゆくよるの
さみしさのかたわらが
よるのとりの止まり木になる
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